「築50年のマンション」と聞いたとき、みなさんはどう感じますか。
私は半世紀という歴史にロマンを感じます。
“住むには古すぎる” “老朽化が心配” “耐震性は大丈夫なのか?” こういった声が多く聞こえてきそうですね。
中古の不動産をメインに取り扱う不動産仲介業で仕事をする筆者は、築40〜55年くらいのマンションの売買を年に5、6件携わります。
年に5、6件の売買に携わる過程の中で、大体20〜30件の同年代の物件を内覧しているので、ほぼ日常的に触れています。
築40年以上経過しているマンションは一般的に「築古(ちくふる)」などと呼ばれますが、中古不動産市場では常時数多くの売出し情報が出ています。今回はそんな築古マンションについて、触れていきたいと思います。
この記事はこんな人におすすめです。
・中古マンションの購入を考えている人
・築年数がある程度経過している不動産の購入を検討している人
■生活するうえで築年数は気にするべきなのか?
今ではリノベーション・リフォーム技術がとても発達していて、「居住空間」の作り方にも多様性が生まれています。そのおかげもあって、築年数に関係なく、中古マンションの流通も安定しています。
近年の傾向としては、築古マンション一室を不動産会社が買い取り(仕入れ)をし、室内を全面的にリノベーションしたうえで再度販売するというビジネスモデルが普及していて、築年数は古くても、室内空間は築年の浅い分譲マンションと比較しても遜色ない物件が多く供給されています。
そのため、購入検討者も自分が住むイメージが湧きやすくなっています。
こうした背景も手伝ってか、「建物の築年数にはそこまでこだわらず、とにかく室内を自分好みのリノベーションで仕上げたい」という希望を持つ人も増えてきています。
■耐震性について
現在の耐震基準は、1981年6月1日に施行され、一般的に新耐震基準と呼ばれています。一方、それ以前のものは旧耐震基準となりますが、見分け方のポイントは、建物完成の時期ではなく、「建築確認取得の時期」になります。
建築確認の取得とは、建築主が役所に対して建築の申請をし、これが受理されることをいいます。
したがって、例えば1981年7月に完成したマンションでも、建築確認の取得が1981年5月以前であれば、旧耐震基準のマンションということになります。
最近では、旧耐震基準の時期に建築されたマンションであっても、耐震補強工事を実施することで、新耐震基準に適合させるという取り組みも増えていますので、旧耐震基準の時期の分譲マンションを検討する際には、耐震補強工事の有無もチェックしておきたいですね。
■建て替えの話が出たりしないの?
日本最古の分譲マンションは1953年に建築された渋谷区の「宮益坂ビルディング」ですが、2020年に建て替えが完了しました。他にも、国内の分譲マンションの建て替え事例はありますが、実は、数としてはそこまで多くありません。
なぜなのか。理由は大きく以下の二つです。
・建て替えに要する費用がまかなえない
・所有者の中でマンションの建て替え決議の同意がなかなか得られない
一つは、建て替えをするためには、当然ですが現在の建物の解体費用・新しい建物の建築費用がかかりますので、マンションの積み立てたお金でこの費用がまかないきれないなど、経済的な事情があります。そしてもう一つは、建て替えの計画を進めるために必要な「所有者の5分の4以上」の賛同が、なかなか集まらないという点です。
こうした理由から、建て替えはそう簡単には実現しないということがいえますが、「中古マンションを購入した途端に建て替えの話が具体化してしまった」なんてことが起きたらパニックになってしまうと思いますので、中古マンションの購入を検討するときには、マンション内で建て替えの話が議題になっていないかどうかなどは、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
■老朽化は大丈夫?
多くの分譲マンションでは、築年数ごとに想定される、マンションの共用部分や配管等の修繕計画が練られています。これを「長期修繕計画」といい、4~5年ごとに見直しをしながら、建物を長く使用していけるように修繕工事を実施していきます。この修繕工事は、各部屋の所有者が毎月支払う修繕積立金でまかなわれます。築古マンションの購入を検討するうえで、建物の老朽化が心配という人は、この長期修繕計画や、マンション全体で修繕積立金がどのくらい貯まっているかなどを確認すると、将来的な修繕に対する、そのマンションの考え方や運営状況がわかるので、いい判断材料になるでしょう。
■歴史の積み重ねが魅力にもなり得る
ヴィンテージマンションの代表格として知られる広尾ガーデンヒルズなど、歳月を経ることで魅力や価値が深まるマンションもあります。
また、最近では昔懐かしい雰囲気に新しいインテリアなどを取り入れた「レトロモダン」というスタイルも人気があり、中古マンションの中でも、今回テーマにした築古マンションへの注目度は、今後も高いといえるでしょう。
冒頭にも挙げたとおり、その歴史が長ければ長いほど、街の一部として、“その街の移り変わりを見てきた”建物に、筆者はロマンを駆り立てられます。新しい建物ばかりの街並みよりも、さまざまな年代の建物が混在していて、雑然としているそれのほうが、より人間くさくて、より魅力的だと感じるのは私だけでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
コメント